子規と新海非風の合作小説・「山吹の一枝」
本資料「山吹の一枝」は、子規と子規の友人・新海非風(正行)が交互に執筆した小説です。形態は折本で上下巻に分かれており、上巻は37折、下巻は48折です。表紙には子規の蔵書印である「獺祭書屋図書」の角印が押されています。
「山吹の一枝」の主人公は紀尾井という男で、モデルは友人の五百木飄亭(良三)と言われています。明治23年、当時学生だった子規と非風、飄亭は下宿していた常盤会寄宿舎で紅葉会という文学の会を結成しました。紅葉会では、寄宿舎の学生を巻き込んで詩や歌、俳句や都々逸、小説などを盛んに作り、回覧雑誌『つづれの錦』を作成しています。またこの頃、子規は坪内逍遥の『当世書生気質』や幸田露伴の『風流佛』に触発され、小説に対する熱意が高まっていました。
本資料の作成年代は、モデルの飄亭が子規と出会った明治22年の秋以降、非風が軍に入営して常盤会寄宿舎を離れる明治23年12月以前と考えられます。飄亭は、当時のことを回想録「夜長の欠び」で、「三人で合作小説を日課にして一日に十枚ずつ必らず書く」こととしていたと振り返っています。「山吹の一枝」も、こうした青春時代に生まれた作品であり、若き子規の小説への憧れと、仲間との文学熱の盛り上がりが感じられます。