資料解説COMMENTARY
編集者の卵だった、少年時代の子規自筆の回覧雑誌
本資料「桜亭雑誌 第六号」は、子規が少年時代に編集・筆写した回覧雑誌です。全10丁からなる冊子で、表紙には表題とともに「明治十二年五月廿九日木曜日発兌」と発行日が記され、また発行所として「雷雲社」の名が付されています。
「桜亭雑誌」は、のちに編集者として手腕を発揮する「ジャーナリスト子規」の原点として重要な資料です。子規が「桜亭雑誌」を発行したのは、勝山学校在学時、11歳頃のことでした。子規は「桜亭仙人」というペンネームで「雷雲社」の社長・編集長・書記を一人でこなし、友人から集めた投書作文や雑報、書画などを丹念に筆写し、友人間で回覧しました。ここに収録された歴史論、経済論、教育論などの多岐にわたる作文は、内容の巧拙はさておき、立身出世を夢見て勉学に励んだ、明治松山の少年たちの気概を伝えています。
「桜亭雑誌」はこれまで、第三号(表紙のみ、内容は第一号)、第四号、第五号の存在が知られ、講談社版『子規全集』に収録されていますが、本資料「桜亭雑誌 第六号」は『子規全集』未収録であり、貴重な資料です。本資料に収められた個々の文章は友人たちから集められたものですが、そこには「編集長」である少年子規の問題意識が投影されていると見てよいでしょう。