資料解説COMMENTARY
子規の自作句稿としては最大規模の一冊
本資料「明治廿九年俳句稿」は、子規が明治29年に詠んだ俳句をまとめた自筆の俳句稿です。国立国会図書館に所蔵されている子規自選句集「
明治29年は、子規の俳句革新運動が軌道に乗り、日本派(子規派)の俳句結社が全国に現れはじめた時期にあたります。また子規自身の俳句数の面でも、「寒山落木」清書本に記された俳句数は、明治27年で2,366句(抹消句含む、以下同じ)、同28年で2,843句、そして同29年は3,001句に及んでいます(講談社版『子規全集』第2巻解題)。子規にとって明治29年は、自分自身の俳句の上達にとっても、門人たちの活動の面でも、一つのピークを迎えた年でした。
本資料は、もともと明治32年までの4年分の俳句稿と一綴りにされていましたが、昭和20年の終戦後に一年ごとに分けて綴じ直されました。その後、明治31年と同32年の俳句稿は国立国会図書館に収蔵されましたが、明治29年と同30年の俳句稿は長らく行方不明のままでした。現在は、明治29年・30年ともに当館に収蔵され、子規の俳句革新を物語る貴重な資料として保存・活用されています。