松山市立子規記念博物館デジタルアーカイブThe Shiki Musium / Digital Archives
松風会稿「ふるさと」表紙

09「松風会九月会稿 抜萃三十章」

SHOFUKAI-KUGATSUKAIKO

【資料名】

子規筆「松風会九月会稿 抜萃三十章」


【資料名読み】

シキヒツ「ショウフウカイクガツカイコウ バッスイサンジュッショウ」


【作者名】

正岡子規


【作成年】

明治28(1895)年9月6日


【形状・表装】

折本(2冊一式)


【寸法】

縦220㎜×横250㎜(綴じた状態)


資料解説COMMENTARY

郷里松山の人びとへの子規の俳句指導を物語る

本資料は、子規が郷里松山の俳句結社である松風会しょうふうかいの会員の俳句を記した選句稿です。

松風会は、野間叟柳のまそうりゅう中村愛松なかむらあいしょうら松山高等小学校の教員を中心に明治27年3月に結成され、全国初の子規派の俳句結社としても知られています。子規は日清戦争従軍後の静養のため明治28年8月に松山に帰り、夏目漱石の下宿である愚陀佛庵に滞在しましたが、その間、松風会会員に熱心に俳句を指導しました。本資料では、明治28年9月6日の句会で詠まれた句の中から、子規が30句を抜粋して天・地・人の順位を付け、凡例や講評を記しています。

本資料の中で特に興味深いのが、「注意」と題する講評の部分です。例えば、「初秋」という季題は「秋風」や「初冬」と混同されやすいため、「初秋」で句作したときは「初秋」の語を「秋風」や「初冬」に置き換えて吟じてみて、本当に「初秋」がよいと思ったら初めて「初秋」に確定しなさい、とアドバイスしています。また、一つの俳句の中に初秋を表す言葉が重ねて使われている作例も指摘し、同じ言葉の重複は句の「タルミ」を生むから注意するように述べています。

子規から郷里松山の人びとへの、熱のこもった指導ぶりがうかがえる、大変貴重な資料です。

「松風会九月会稿 抜萃三十章」の体裁

01,子規が自ら表題を記している。「抜粋三十章」とあるのは、松風会の句会稿から30句を書き抜いた、という意味。02,子規の署名をはじめ、本資料の文字は非常に丁寧に記されている。03,9月6日の句会で出された課題が、「初秋」「桐一葉」「魂祭」「秋風」「秋蚊」の五つであったことが分かる。いずれも秋の季語。
01,松風会会員の俳句を書き記すにあたり、「注意」と題して講評(俳句全体を見ての所感)を記している。それぞれの季語にふさわしい俳句を作ること、似た意味の言葉の重複に気を付けることなど、具体的なアドバイスが述べられている。02,はじめ「初秋ノ意ヲ」と書いたのを、「初秋の語句ヲ」と訂正している。松風会会員に指導内容がきちんと伝わるよう、子規が言葉選びにも気をつかったことがうかがえる。03,「注意」の文章は、すべてこの日の句会の課題をもとに書かれている。子規が具体的で分かりやすい俳句指導に努めていたことがよく分かる。
01,俳句は右頁と左頁に1句ずつ、十分なスペースをとって記されている。単なる記録ではなく、永続的な保存や鑑賞に堪えうる選句集にしようとの子規の意図が感じられる。02,こちらの俳句は、中村愛松の「秋の蚊やかりこめられて柴の中」というもの。03,こちらの俳句は、釈一宿の「人も蚊もやせたるあきの夕かな」というもの。
01,「追吟」とは、選者である子規自身の俳句のこと。選句稿の末尾に選者追吟が掲載されることが多かった。02,子規の追吟は次頁にかけて全5句が記されている。
01,子規が自ら表題を記している。「抜粋三十章」とあるのは、松風会の句会稿から30句を書き抜いた、という意味。02,子規の署名をはじめ、本資料の文字は非常に丁寧に記されている。03,9月6日の句会で出された課題が、「初秋」「桐一葉」「魂祭」「秋風」「秋蚊」の五つであったことが分かる。いずれも秋の季語。
01,松風会会員の俳句を書き記すにあたり、「注意」と題して講評(俳句全体を見ての所感)を記している。それぞれの季語にふさわしい俳句を作ること、似た意味の言葉の重複に気を付けることなど、具体的なアドバイスが述べられている。02,はじめ「初秋ノ意ヲ」と書いたのを、「初秋の語句ヲ」と訂正している。松風会会員に指導内容がきちんと伝わるよう、子規が言葉選びにも気をつかったことがうかがえる。03,「注意」の文章は、すべてこの日の句会の課題をもとに書かれている。子規が具体的で分かりやすい俳句指導に努めていたことがよく分かる。
01,俳句は右頁と左頁に1句ずつ、十分なスペースをとって記されている。単なる記録ではなく、永続的な保存や鑑賞に堪えうる選句集にしようとの子規の意図が感じられる。02,こちらの俳句は、中村愛松の「秋の蚊やかりこめられて柴の中」というもの。03,こちらの俳句は、釈一宿の「人も蚊もやせたるあきの夕かな」というもの。
01,「追吟」とは、選者である子規自身の俳句のこと。選句稿の末尾に選者追吟が掲載されることが多かった。02,子規の追吟は次頁にかけて全5句が記されている。